Over the Event Horizon

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比例計算が面倒なので考えた事 その2(気象予報士試験実技)

前回,比例計算をしない移動距離などの求め方を考えてみた。

しかし、もっといい方法はないだろうかと模索した結果

少しはましな方法を発見(というほどでもないのだけれど)。

 

まずは、以下の過去問2つを例として考えてみる。

【1】が台風の移動距離を求める問題

【2】がエマグラムでSSIを求める問題

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【1】台風の移動距離を求める問題

気象予報士試験 第45回(平成27年度第2回)実技1問3(3)。

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東シナ海から九州へ進んだ台風について、(1)と(2)で図に未記入の等圧線と10日7時,8時,9時の台風中心の位置を作図させ、(3)で10日9時までの前3時間(10日6時~9時)の台風の移動距離と平均風速を求めさせる問題だ。(問題は(4)以降もあるのだが、今回は関係ないので削除してある)

この(3)の移動距離を求めてみる。

 

まず、図9は以下のようになっている。

f:id:ultrazone7:20180119083447j:plain

本当は台風中心の位置を決めるのがなかなかやっかいで、この位置のズレで移動距離も結構違ってきたりするのだが、今回は関係ないので省略して、公式解答の中心位置を基に移動距離を求める。

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※ちなみに、私は問題文の「移動距離」を直線距離と勘違いして70海里としてしまった。

学校では距離=直線距離、道のり=辿ってきた長さ、と習ったので距離というと2点間の直線距離だと思ってしまったのだ。

実際は、距離と言ってもどちらの意味にも使われるようだ。特に移動距離と言われた場合には、題意からどちらを求められているのか慎重に判断しなければならない。

同様に、学校では速度=ベクトル、速さ=スカラー、と学んだのだが、このあたりの表現も、現実には混同して使用されている事もあるので要注意かもしれない。

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さて、本題に戻って、公式解答は次の通り。

f:id:ultrazone7:20180119083931j:plain

この図を用いて移動距離を求めてみる。

6時→7時の移動距離

7時→8時の移動距離

8時→9時の移動距離

をディバイダーなどで測って右の経度線に次のようにプロットし、補助線?を引く。

f:id:ultrazone7:20180120210014j:plain

補助線?がオレンジ色の線で、手持ちの定規の60mmが緯度1°となるように斜めに線を引く。なぜ60mmかというと、緯度1°=60海里(NM)なので定規の読み値がそのまま距離(海里)として読み取れるからだ。

すると上図のように78mm=78海里と読み取れるので、問題文にあるように5海里刻みに直すと80海里が答えとなる。

もしも問題が「移動距離をkmで答えよ」とあるならば、1°=60海里=111kmなので、111mmの線を引けばいい。

前回は、余白に三角形を描いて求める方法だったがこの方法は図にダイレクトに補助線?を引いて求める方法なので少し時間が省略できる。

しかし、現実的には、上図のディバイダーで経度線に距離をプロットした時点で、小さい目盛7.8つ分。緯度1°が目盛で6つに分けられているので1目盛=10海里。すなわち78海里(77にも見えるが(^_^;))である事が一目瞭然なので、余計な手間をかける事になってしまい、あまり役には立たないのかな?

もっと面倒くさい比例計算が必要な場面では有効となるかもしれない。

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【2】エマグラムでSSIを求める問題

気象予報士試験 第40回(平成25年度第1回)実技2問5(1)。

f:id:ultrazone7:20180120212203j:plain

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この問題では作図の過程でエマグラムに描いた補助線を残しておかなければならないのだが、とりあえずSSIだけを求めてみる。

 

SSIの求め方はいろんなテキストなどに載っているように、気温の状態曲線(実際の気温)上の850hPaの空気塊を500hPaまで持ち上げた時の温度を状態曲線上の500hPaの気温から引いた数値だ。数値が正であっても符号(+)をつけるのを忘れないように!

手順は

①850hPaの露点を通る等飽和混合比線を引く

②850hPaの気温を乾燥断熱線に沿って持ち上げ、①の線と交わる点(いわゆる「持ち上げ凝結高度」。この点で空気が飽和し、雲底高度に相当)から、今度は湿潤断熱線に沿って持ち上げる。

③②で湿潤断熱線に沿って持ち上げたものが500hPaと交わる線の温度を読み取る。

④500hPaにおける状態曲線の温度(実際の温度)から③の温度を引く。

(といったところですが、詳細は他で調べて下さい)

通常は②の持ち上げ凝結高度における左右の湿潤断熱線(線1,線2とする)との距離の比を、そのまま500hPaの線1と線2の間で目測もしくは定規で測って比例計算をして温度を求めるのだが、以下のように図に補助線?を引いて求めてみた。

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持ち上げ凝結高度における、持ち上げた空気塊と左右の湿潤断熱線の距離をそれぞれA,Bとする。

そのA,Bを500hPa上の湿潤断熱線が交わる点から上に向けてプロット。

図が小さいので拡大すると

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このように、プロットしたA,Bの線の一番上の点から反対側の湿潤断熱線の交点に斜線を引く。文字で書くとわかりづらいが、図のように三角形を二つ描く訳だ。

そしてこの2つの斜線が交わるところが、持ち上げた空気塊の(500hPaでの)温度となる。

こうすれば、比例計算を行うことなく温度をダイレクトに求める事ができる。

この方法は、【1】の移動距離よりは使えそうな気がするのだがどうだろうか?

 

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上図の三角形2つの交点がなぜ温度を示す事になるのか?

いちおう簡単に、証明と言うほどでもない証明をしておくと

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エマグラムで描いたような三角形二つを描き、それぞれ上のように点A,B,C,D,E,Fをおき、長さをAB=x,CD=y,EF=z,BF=a,FD=bとする。

三角形ABDとEFDは相似(△ABD∽△EFD)なのでx:(a+b)=z:b・・・①

三角形CDBとEFBは相似(△CDB∽△EFB)なのでy:(a+b)=z:a・・・②

①より(a+b)z=xb

②より(a+b)z=ya

よってxb=ya→(x/y=a/b)

x:y=a:bとなる。

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